市念舞え
昨年の4月ごろ
近所の小汚い中華料理屋にて
初めてだったので、とりあえず定番のラーメンとチャーハンを頼んだあと
いかにも人の良さそうな店員のおばあちゃんとおしゃべり
一年前の今日について
大きな揺れが起きたのはお店の仕込みをしているときだったそうな
地震の揺れがおさまってテレビをつけたときに知ったらしい
交通機関が乱れて帰宅難民が大量に発生したこと
都心から家まで歩いて帰ってきてる人がたくさんいること
テレビから流れるニュースでおばあちゃんはなんとなく実態を知り
抑えきれない気持ちが心の底から湧いてきたって
最初から迷いはなかったそうな
閉店時間が過ぎても
深夜遅く、ひとけがなくなっても
ラーメンを振る舞い続けたとさ
接客のおばあちゃん一人、無口に鍋をふるおじいちゃん一人
絶対60は超えている
もしかしたら70近いかも
そんなご高齢なのに、という言葉は飲み込んだけど
えらいですね~とひとこと言ってみた
おばあちゃんは言いました
「あたしたちにできることといえば、
お店を開けることしかないから」
人生の重みが詰まったその言葉に
こんな若造に返す言葉があるわけもなく、
代わりに出来上がったラーメンのスープを一口
びっくりした
・・・まずい。
いや、
くそまずい。
急いでチャーハンの方を一口
・・・まずい。
いや、
くそまずい。
失礼になるとおもって、吐き気をこらえてがんばって食べたけど
結局ラーメンもチャーハンも半分以上は残したよ
おじいちゃん、おばあちゃん、
あんなまずいラーメンとチャーハン
食べたことないよ
そのあとコンビニ弁当でお口直しをしながら、
あの日、歩き疲れて、家が停電してないか不安でいっぱいの
帰宅者たちのことをおもう
灯りに誘われてあの小汚い中華料理屋に入った人たち
どうか空腹で味覚のハードルが下がって、
いや、もはや疲れで舌の感覚がマヒしていたことを切に願う
それ以降
その小汚い中華料理屋の敷居をまたぐことは
二度となかったことは言うまでもないだろう・・・
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震災から一年立ちました
今日の2時46分
テレビから流れる号令に合わせてなんとなく目を閉じたとき
日本中で同じ沈黙が共有されているとおもったら
なんか、とっても鳥肌の立つ思いがしました
いろんな意味で
今後もこの国にとって大きな意味を持つ出来事であり続けるでしょう
アーメン